人事 労務関連 総務

年末調整の基本~「給与所得者の扶養控除申告書」を回収~

 今回はバックオフィス業務である年末調整の流れについてご紹介致します。扶養控除とは、簡単に言えば「扶養家族がいる場合、税金の負担を軽減できる」という制度です。扶養控除申告書は所得税の課税区分を決める重要な役割を担っており、これを提出することで「配偶者控除」「扶養控除」「障害者控除」「寡婦(寡夫)控除」「勤労学生控除」といった控除を受けることができるようになります。この時期になると、うんざりする担当者も多いのではないでしょうか。今回はこういった年末調整の基本についてご紹介致します。

 

給与所得者の扶養控除申告書を回収

本人に扶養の対象となる親族がいれば、一定の金額の所得控除が受けられます。

  • 配布する書類
    ・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(扶養控除申告書)
  • 検索場所
    国税庁/[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告
  • 配布時期
    ・11月15日ごろ
  • 回収の時期
    ・11月末ごろ
  1. 「給与所得者の扶養控除申告書」を配布する
    翌年1月1日以降に扶養控除を受けるための書類なので、ここで配布する申告書は翌年度のものになる
  2. 「給与所得者の扶養控除申告書」を回収する
    今年度、最後に支払う給料または賞与の2週間前には回収する
  3. 記入漏れや添付漏れが無いかを確認する
    印鑑の押印漏れや明らかな記入ミスがあったら、本人に連絡する。中途入社の人からは、前職分の「源泉徴収票」を添付してもらう
  4. 今年の給与所得者の扶養控除申告書も用意する
    今年度の「給与所得者の扶養控除申告書」は、昨年末に回収しているので、2年分の書類を比較して、住所や扶養親族の数に変更が無いかを確認する

扶養控除の基礎を知る

  • 扶養控除の対象となる人
    配偶者以外の親族で、12月31日現在納税者と生計を一にしている人、かつ年間の合計所得金額が48万円以下で16歳以上の人です。但し、青色事業専従者や白色事業専従者は除きます。

国外に扶養家族がいる場合

1年以上の留学をしている家族や、日本で働く外国人が母国に残してきた親族について扶養控除を受けるためには、

  1. 親族関係書類(戸籍の附表やパスポートのコピー、外国政府が発行した証明書など)
  2. 送金関係書類(その年度中の金融機関の送金依頼書やカードの利用明細書等)

上記を「扶養控除申告書」に添えて、提出してもらいます。

主な所得控除の一覧

基礎控除 所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円
区分 年齢 控除額
扶養控除 年少扶養 16歳未満 0万円
扶養親族 16歳~19歳未満 38万円
特定扶養 19歳~23歳未満 63万円
扶養親族 23歳~70歳未満 38万円
老人扶養 70歳以上 48万円
同居老親等 70歳以上 58万円
配偶者控除 納税者本人の合計所得金額 一般 70歳以上
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円
障害者控除

※1,※2

障害者 障害者手帳に身体上または精神上の障害があると記載されている人。知的障害があると認定された人など 27万円
特別障害者 身体障害者手帳が1級または2級。精神障害者手帳が1級。重度の知的障害者と判定された人。6か月以上寝たきりで、複雑な介護を必要とする人など 40万円
同居特別障害者 特別障害者のうち、本人や配偶者、生計を一にする親族親族と同居を常としている人 75万円
寡婦・寡夫控除

※2

寡婦 夫と死別または離婚して子がいる人。夫と死別後(または離婚して子以外の扶養家族がいる人)で所得500万円以下の人 27万円
寡夫 妻と死別または離婚して子がいる人のうち、所得が500万円以下の人 35万円
特別の寡婦 夫と死別または離婚して子がいる人のうち、所得が500万円以下の人 35万円

※1 本人だけでなく、配偶者や扶養親族が当てはまる場合にも適用がある
※2 扶養控除の対象ではない16歳未満の扶養親族がいる場合にも、適用される

添付書類

  • 添付書類を確認する
    次の場合も、照明する書類を添付してもらいます。

    1. 年の途中で入社した人で、前職分の給与とあわせて年末調整したい人は、前職の「源泉徴収票」
    2. 非居住者である親族について扶養控除または障害者控除の適用を受けたい人は、親族関係が分かる書類と扶養親族への送金が分かる書類
  • マイナンバーの記載は必要か
    従業員本人だけでなく、控除対象となる配偶者や扶養親族のマイナンバーの記載が義務付けられています。しかし、会社がマイナンバーの記載した帳簿を、別途作成して保管していれば、不要です。その場合、「記載すべきマイナンバーが、給与支払者に提供済のマイナンバーと相違ない」旨の記載しておきます。

年の途中で扶養親族が増えたり、亡くなった場合

12月31日現在の現況で判断するので、今年の扶養親族に加えて計算します。亡くなった場合、死亡の日の現況で判断するので、今年分の控除の対象として計算します。

 

まとめ

 今回は年末調整の中でも年末調整の給与所得者の扶養控除申告書を回収についての基本的なを説明をしましたがいかがでしたか。扶養控除等(異動)申告書は従業員の労務管理を行ううえで大切な書類です。扶養親族の人数は、所得税や住民税の税額にも影響を与えるものです。しかし、毎年の作業となるので従業員の数が多ければ、管理側の負担も大きくなりがちだといえます。年末調整のタイミングで処理をしようとしても、書類のミスも増えてしまう恐れがあるでしょう。管理業務の負担を減らすためには、クラウドサービス等の業務効率化ツールを導入してみるのも1つの方法です。そういった給与計算の仕事を円滑に行うには、社会保険労務士の資格取得がおすすめです。働きながら勉強できる資格なので、給与計算の担当としての成長を願うなら資格取得や複業で他社の業務に携わってみてはいかがでしょうか。

-人事, 労務関連, 総務
-, , , , , , ,