総務

テレワークが原因で特許出願などの手続きが期限までに終わらない場合の救済措置

 新たにテレワーク(リモートワーク)を導入しようとする事業者や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急いでテレワークを導入したものの、導入について十分な検討をする時間がなかった事業者向けに、テレワークに伴って生じうる人事評価・労務・法務・情報セキュリティに関する問題点を簡単に記載致します。今回は、テレワーク導入にあたって、知的財産について疑問を感じている会社向けに、テレワークが原因で特許出願などの手続きが期限までに終わらない場合の救済措置があるのかについてご紹介致します。



指定期間に対する救済の申し出


 特許庁に対する特許、実用新案、意匠、証憑との出願審査、登録、審判などの手続きについては、手続きの中で審査官等が期限を指定する「指定期間」と、法令において期限が法法定されている「法定期間」の2種類があります。

 諸外国においては、新型コロナウイルスの影響に伴う遅延について職権で一律に期間延長を行うケースもありますが、日本の特許庁にかかる手続きについては、救済をお止める申し出、または救済手続きを求める書面の提出が必要です(特許庁「新型コロナウイルス感染症により絵強を受けた手続きの取り扱いについて」)。

 

指定期間に対する救済の申し出


 方式審査などの特許庁長官の名前で行われる手続きについては、通常の期間延長可能期間に一定期間(新型コロナウイルスによる影響の場合は、緊急事態宣言による緊急事態措置を実施すべき期間を原則として、その延長や海外の状況などを勘案して判断する期間)を加算した期間は、帰化年長請求がなくても有効な手続きとして受理されます。当該期間中は期間延長請求が不要ですが、当初の指定期間中または指定期間通過後に、上申書または意見書等に指定期間中に手続きができない、またはできなかった理由を説明して、手続きの受理を申し出る必要があります。

 また、拒絶理由通知への応答については、審査官に対して、当初の指定期間中または指定期間徒過後に、上申書または意見書等に指定期間中に手続きができない、またはできなかった理由を説明して、手続きの受理を申し出ることで、期間徒過後の当該手続きを容認すべく柔軟に対応されることとなっています。

 申し出における理由の記載例としては、以下の文例が特許庁から示されています。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、出願人が勤務する「株式会社○○」/代理人が勤務する「○○事務所」が令和2年〇月〇日から(令和2年〇月〇日まで)閉鎖となり、手続きをすることが出来ません(でした)。令和2年〇月〇日より手続きが可能となる(なった)ため、手続きを認めてください。

 なお、委任状などの証明書に法人の代表者などの署名または記名押印が得られないときは、前期の救済の申し出は可能ですが、署名または記名押印のない証明書の提出や電子データによる提出は認められていないため、注意が必要です。

 

法定期間に対する救済手続き


 法定期間に対する救済機関は、手続きごとに異なります。

「その責めに帰することが出来ない理由」による期間徒過

 法令上、「その責めに帰することが出来ない理由」による期間徒過の救済が定められているものについては、所定期間経過後6か月以内に限り、手続きが可能となってから14日以内に、提出書面に手続きができなかった理由を記載するか、上申書で理由を説明する必要があります(なお、所定期間経過後の月数は異なる場合があります)。「その責めに帰することが出来ない理由」による期間徒過の救済が定められているものは下記が挙げられます。

  1. 新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書の提出
  2. パリ条約による優先権主張に係る優先権証明書の提出
  3. 特許出願の分割
  4. 実用新案登録出願または意匠登録出願から特許出願への変更
  5. 実用新案登録に基づく特許出願
  6. 特許権の存読期間の延長登録出願
  7. 改正前特許法第67条の2の2第1項の規定による書面の提出
  8. 特許料(登録料)の納付
  9. 既納の特許料(登録料)の返還請求
  10. 拒絶査定不服審判の請求
  11. 再審の請求
  12. 出願審査の請求の手数料または過誤納の手数料の返還請求
  13. 実用新案登録の明細書等の訂正
  14. 実用新案登録無効審判請求の取り下げ
  15. 参加申請手数料の返還に係る参加申請の取り下げ
  16. 補正却下決定不服審判の請求
  17. 意匠法第60条の6第1項の規定により意匠登録出願とみなされた国際出願に係る個別指定手数料の返還請求
  18. 証憑出願時の特例の規定による証明書の提出
  19. 国際登録の取消し後の商標登録出願
  20. マドリッド協定議定書の廃棄後の商標登録出願
  21. 国際特許出願における発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書の提出
  22. 国際特許出願又は特許法第184条の20第1項の申し出をする場合におけるパリ条約による優先権主張に係る優先権書類の提出
  23. 国際意匠登録出願における意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書の提出

(出典:特許庁「新型コロナウイルス感染症により影響を受けた手続の取扱いについて」)

「正当な理由」による期間徒過

 法令上、「正当な理由」による期間徒過の救済が定められているものについては、書影期間経過後1年否に限り、手続きが可能となってから2か月以内に、提出書面に手続きができなかった理由を記載した回復理由書を提出する必要があります(なお、所定期間経過後の月数は異なる場合があります)。「正当な理由」による期間徒過の救済が定められているものは下記が挙げられます。

  1. 外国語書面出願の翻訳文の提出
  2. 出願審査の請求
  3. 特許料(登録料)および割増特許料の追納
  4. 外国語特許出願の翻訳文の提出
  5. 国際特許出願における材会社の特許管理人の選任
  6. 外国語実用新案登録出願の翻訳文の提出
  7. 商標権の存続期間の更新登録の申請
  8. 後期分割登録料及び割増登録料の追納
  9. 防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願

(出典:特許庁「新型コロナウイルス感染症により影響を受けた手続の取扱いについて」)

特許協力条約に基づく国際出願

 特許協力条約に基づく国際出願(PCT出願)については救済制度があります。災害などで提出期限を徒過したことを説明する理由書を国際予備審査請求書に添付して、当該の事情がなくなった後できるだけ速やかに書面を提出したことを証明する証拠を提出期間の経過後6か月以内に提出します。(PCT規則82の4.1及び国際出願法施行規則第73条の3)。④なお、新型コロナウイルスによる感染症により影響を受けた場合は、当面の間、証拠書類の提出を必須とされていません。

コラム

優先権主張出願の救済

 優先権主張出願には、基本発明を先に出願しておいて、その後の改良発明を取り込んで権利化することを目的とする国内優先権主張出願(特許法第41条)と、最初に出願した国(第一出願国)とは異なる国で出願する際に、第一出願国での出願時に出願した者と、みなして扱う国際優先権主張出願(同法43条)とがあります。例えば、特許出願にかかる国内優先権主張出願における優先期間は、最初の出願から12か月です。

 優先期間経過後2カ月以内に、優先期間中に優先権主張を伴う出願ができなかった理由w記載した回復理由書を提出することにより救済される制度(特許法第41条1項1号括弧書等、同法第43条の2第1項)があります。

 なお。特許協力条約に基づく国際出願(PCT出願)にかかる優先権主張(PCT規則8条(1))にかかる」回復理由書の提出(国際出願法施規28条の3第1項)ついて、新型コロナウイルスによる感染症により影響を受けた場合は、当面の間、証拠書類の提出を必須とされていないことは、通常のPCT出願と同様です。

 

まとめ


 上記までにご紹介致しました通り、テレワークが原因で特許出願等の手続きが期限までに終わらなくても、救済措置はあります。しかし、救済を求める申し出や救済手続きを求める書面の提出が必要です。

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