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外出自粛により開催が難しい場合、定時株主総会の時期を延期できるか

 新たにテレワーク(リモートワーク)を導入しようとする事業者や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急いでテレワークを導入したものの、導入について十分な検討をする時間がなかった事業者向けに、テレワークに伴って生じうる人事評価・労務・法務・情報セキュリティに関する問題点を簡単に記載致します。今回は、テレワーク導入にあたって、外出自粛により開催が難しい場合、定時株主総会の定期を延期できるかをご紹介致します。



定時株主総会の開催義務


 会社法では、定時株主総会は、毎事業年度の終了後言って印お時期に招集しなければならないと定めています(会社法第296条1項)。そして、定時株主総会を開催しないことについては罰則が定められており(同法第976条16号)、定時株主総会を開催しないということはできません。

例えば、事業年度を4月1日から3月31日までと定めている株式会社の場合で、事業年度の最終日(3月31日)を定時株主総会ぶおける株主の議決権行使の基準日(定時株主総会で議決権を行使できる株主を株式会社側で確定する日)としているときは、この基準日から3か月以内に定時株主総会の開催時期として定款で定めているケースが多くみられます。

 

定時株主総会の延期と新たな基準日の設定


しかし、定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合でも、天災など開催が困難になる理由があるにも関わらずその時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではない、という考え方が法務省から示されています(法務省「定時株主総会の開催について」)。したがって、天災などの理由で定款で定めた時期に定時株主総会が開催できない状況であれば、その状況が解消された後で合理的な期間内に定時株主総会を開催すればよく、状況が解消するまで定時株主総会の開催を延期することが出来ます。

ただし、定時株主総会を延期する場合でも、「株主が議決権を行使できるのは、基準日から3か月以内」(同法第124条2項)という制限はかかります。新たな定時株主総会の開催予定日から3か月以内に新たな議決権行使のための基準日を設定した上で、当該基準日の2週間前までに当該基準日と基準日株主が行使することが出来る権利の内容を公告する必要があります(同法第124条3項本文)。

コラム

定時株主総会の延期と剰余金配当の手続き

 剰余金の配当の基準日を定款で定めていた場合でも定款上の基準日に剰余金の配当をすることが出来ない状況が生じた時は、定款で定めた剰余金の配当基準日の株主への配当は行わず、新たな剰余金の配当の基準日と定め、当該基準日株主に剰余金の配当をすることが出来ます。この場合は、定時株主総会の延期に伴う議決権の基準日の変更と同様に、新たな基準日の2週間前までに公告する必要があります(会社法第124条3項本文)。

一方、計算書類等の提出・報告を継続会(90ページ参照)に延期した上で、当初の定時株主総会において剰余金の配当決議を行うことが出来ます(同法第461条)。これは剰余金の分配額の基準となる「最終事業年度」が、計算書類等が承認済の事業年度のうち最も遅いもの(同法第2条24号)とされているためです。なお、この場合においても、当期の計算書類の確定はなされていないものの、決算数値から予想される分配可能額にも配慮することとされており(「継続会(会社法第317条)について」)、大幅な減収減益が予想されているにもかかわらず配当を行うようなことは避ける必要があります。

 

まとめ


 上記までにご紹介致しました通り、天災などの理由で定時株主総会が開催できない場合は、状況が解消するまで延期できます。

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