新たにテレワーク(リモートワーク)を導入しようとする事業者や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急いでテレワークを導入したものの、導入について十分な検討をする時間がなかった事業者向けに、テレワークに伴って生じうる人事評価・労務・法務・情報セキュリティに関する問題点を簡単に記載致します。今回は、テレワーク導入にあたって、知的財産について疑問を感じている会社向けに、ウェブ配信方式で授業をする際に著作権について注意すべきことについてご紹介致します。
著作権法における授業の配信
従来の著作権法では、教育機関が、公表された著作物を、授業が行われる場所以外の場所(生徒の自宅等)において当該授業を「同時に」受ける者に対して、授業の過程で公衆送信(オンライン配信)する「同時配信」は、著作権者の個別の許諾を必要とせずに認められていました(同法旧第35条2項)。しかし、生徒の都合の良い時間(授業が行われる時間とは違う時間)に録画されていた授業を受ける「異時配信」には、事前に著作権者の許諾が必要でした。
しかし、2020年4月28日から施工された改正著作権法により、同時配信についても、教育機関が一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)に対して相当な補償金を支払うことで、個別の著作権者からの許諾を受ける必要がなくなりました(同法新第35条1項、2項)。そして、新型コロナウイルス感染拡大による教育機関の休校措置に伴い、2020年度の補償金については無償とされました(令和2年4月24日文化庁長官認可)。なお、無償期間中であっても、授業目的公衆送信補償金制度を利用するのは、教育機関側でSARTRASへ届出をする必要があります(SARTRAS「教育機関設置者による教育機関名の届出について」)。
対象となる教育機関
授業目的公衆送信補償金制度を利用可能な教育機関は、組織的、継続的に教育活動を営む非営利の教育機関とされており、学校教育法その他の根拠法令に基づいて設置された機関とこれに準ずるところに限られています(著作物の教育利用に関する関係者フォーラム「改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版)」5ページ)。したがって、学習塾、予備校などの営利目的の企業が設置する教育施設やカルチャーセンターなどは含まれません。
利用目的の範囲・方法
授業の過程における利用に供する目的に当たる限りは、加害の部活動や補習も制度の対象となります。一方、制度の対象となる教育機関による利用であっても、保護者向けの配信や教職員向けの研修等での利用は対象外となります(文化庁著作権課「平成30年著作権法改正による『授業目的公衆送信補償金制度』に関するQ&A(基本的な考え方)」問8)。
また、その利用範囲は、「必要と認められる限度」に限られ、授業の家庭での利用を口実に不特定多数に配信することは認められません(「Q&A」問6)。また、「ドリルやワークブックなど授業を受ける者が購入することが前提となっている教材を購入が必要なくなるような態様で配信すること等は、著作権者の権利を不要に害するとして認められません(「うんっ用指針」9ページ)。
まとめ
上記までにご紹介致しました通り、ウェブ配信方式で授業をする際に著作権について気を付けることは、教科書などの著作物を個別の許諾なくオンライン授業で利用可能となりました。但し、利用可能な範囲に制限があります。