簿記と経理 経理・会計・財務

日々の会計処理~消費税の基本~

 今回はバックオフィス業務である経理の日々の会計処理、消費税の基本についてご紹介致します。消費税の会計処理をする場合、免税事業者は税込経理方式を採用しなくてはいけません。課税事業者は税込経理方式と税抜経理方式の2種類から選択でき、どちらの方式を採用するかは事業者の任意となります。これから経理担当者として働きたいと思っている方はぜひ参考にしてみてください。今回はそんな消費税の基本についてご紹介致します。

 

税込み経理と税抜き経理

会社はもらった消費税と支払った消費税の差額を、税務署に納付します。

  • 業務の内容
    ・会計ソフトへの入力

消費税の基本を知る

  1. 消費税のしくみ
    私たちは、商品を購入したりサービスの提供を受けると、本来の価格にプラスして、消費税を支払います。消費税を負担するのは最終的に商品やサービスの提供を受けた人ですが、サービスを提供した会社が消費税を預かって納税するしくみになっています。
    会社は、売上と一緒に消費税を預かりますが、同時に仕入や交通費などの費用と一緒に消費税を支払います。そこで、もらった消費税から支払った消費税を差し引き、年に1度、税務署に申告・納税をすることになっています。
  2. 税込経理と税抜経理の違い
    消費税を会計処理する方法には「税込経理」と「税抜経理」の2種類があり、どちらの方法を選ぶかは、会社が自由に決められます。

    税込経理とは、会計処理するときに消費税を含めた総額で仕訳する方法です。
    税抜経理とは、会計処理するときに本体価格と消費税とを分けて仕訳する方法です。中小企業では、仕訳をするときは処理が簡単な税込経理をしておき、会計ソフトの「月末一括税抜処理」機能を使って、残高試算表や決算書は税抜経理で作成するのが一般的です。

消費税の会計処理

  1. 消費税を預かった時の会計処理
    税抜処理で消費税を請け負ったら、消費税は「売上」ではなく「仮受消費税」になります。
    ●税込経理で売上を計上する仕訳例(100万円の商品を販売した 消費税10%)

    借方 貸方
    売掛金  1,100,000 売上  1,100,000

    ●税抜経理で売上を計上する仕訳例(100万円の商品を販売した 消費税10%)

    借方 貸方
    普通預金  1,100,000 売上  100,000
    仮受消費税  100,000
  2. 消費税を支払ったときの会計処理
    税抜経理で消費税を支払ったら、消費税は「費用」ではなく、「仮払消費税」になります。
    ●税込経理で仕入を計上する仕訳例(50万円の商品を仕入た 消費税10%)

    借方 貸方
    仕入  500,000 買掛金  550,000

    ●税抜経理で仕入を計上する仕訳例(50万円の商品を仕入た 消費税10%)

    借方 貸方
    仕入  500,000
    仮払消費税  50,000
    買掛金  500,000
  3. 内税の会計処理
    商品やサービスの価格に消費税を含めて表示するか、別立てで表示するかは、会社が自由に決められます。消費税を含めて総額で表示することを「内税」、税抜きで消費税を別に表示することを「外税」といいます。内税表示の場合は、110分の100で割って、本体価格を計算します。
    ●消費税込み(内税)で1万円の飲食費を支払った場合
    食費の本体価格:10,000×100/110≒9,090
    消費税の金額:9,090×10÷100=909

 

消費税の基本~軽減税率とは~

消費税には、10%の税率と8%の税率の2種類があります。

  • 業務の内容
    ・会計ソフトへの入力
  • 業務の時期
    ・日々
  • 検索場所
    ・国税庁/消費税/軽減税率/個別事例

軽減税率の基本を知る

  1. 消費税の複数税率とは
    消費税の税率は10%と8%の2種類があります。それぞれの税率の内訳は、次の通りです。

    名称 消費税率 消費税(国税) 地方消費税
    標準税率 10% 7.8% 2.2%
    軽減税率 8% 6.24% 1.76%


    単一の消費税であれば、請求書や領収書の税込金額をもとに税抜の金額を計算することが出来ましたが、複数税率の場合は、品目ごとの支払額が分からなければ、消費税の計算をすることが出来ません。そのため複数税率の実施後は会計ソフトに税率ごとに分けて入力する必要があります。

  2. 軽減税率が適用される品目
    ある特定の商品について、標準的な消費税率10%より低く設定された消費税のことを軽減税率といいます。軽減税率は、「低所得者へ経済的な配慮をする」という目的の下で導入されたものです。軽減税率が適用されるのは、次の2つです。

    1. 食品表示法に規定されている飲食料品(ただし、アルコール分が1度以上の飲料(=酒類)と外食を除く)
    2. 週2回以上発行され、かつ定期購読されている新聞

    外食やケータリングが軽減税率の対象とならず、標準税率10%が適用されるため、同じ商品でも店内で飲食する場合は10%、テイクアウトなら8%、また出前は8%だが、ケータリングの場合は10%といった細やかな会計処理が必要になります。

  3. どの税率が適用されるかあいまいなもの
    大きく次のような考え方をします。具体的な事例については、国税庁が個別事例についてのQ&Aを公表しているので、参考にしてください。

軽減税率が適用される例

軽減税率8%が適用されるもの 標準税率10%が適用されるもの
食品表示法による区分 みりん風調味料、ノンアルコールビール、甘酒など 酒類、料理酒(アルコール分1度以上)
医薬品等に該当しないサプリメント、栄養ドリンク 医薬品、医薬部外品の表があるサプリメントや栄養ドリンク
販売時の用途による区分 ミネラルウォーター、飲用の氷 水道水、精製水、ペットフード、保冷用の氷、ドライフード
外食に該当するか否かで区分 牛丼やハンバーガーなどのテイクアウト 牛丼やハンバーガーなどの店内飲食
ピザや蕎麦、寿司などの出前 プ座や蕎麦・寿司の店内飲食
コンビニ弁当の購入 イートインスペースでの飲食(返却に必要な食器に入れた場合)
喫茶店から会議室へのコーヒーの出前 給仕を伴うケータリングサービス
学校給食や老人ホームの食事 学生食堂や社員食堂の食事
ホテルや旅館の客室内にある冷蔵庫内の飲み物 ホテルのルームサービス
食品と一緒に販売される商品 食品の販売に際し使用される包装紙、容器などで通常必要なもの 贈答用の放送など別途対価を定めているもの
食品と食品以外の商品をパッケージングして販売する商品で、価格が1万円以内で、飲み物や食品の割合が3分の2以上 個々の価格が表示されている食品と食品以外の商品をセットにして販売する場合の、食品以外に対応するもの
送料込みの商品等、別途送料を請求しないもの 別途請求する送料
新聞の場合 週2回以上発行される新聞で定期購読されているもの コンビニや駅の売店で販売される日刊新聞、新聞の電子版
①軽減税率が適用されるかどうかの判定 取引の時点で判断する。例えば事業者が人のいんしょくようとして販売したものを、顧客が飲食以外の目的で子乳して使用したとしても、8%の軽減税率が適用される。反対に、人の飲食用以外の目的で販売されるものは、たとえ飲食が可能なものでも、軽減税率の対象にはならない
②医薬品や医薬部外品 食品表示上の食品には該当しないため、軽減税率は適用さ恋愛。いわゆる栄養ドリンクやサプリメントのうち、医薬部外品の表示があるものは10%ないものは8%となる
③飲食料品の包装紙や容器のうち、販売のために通常必要なものとして使用されるもの その包装紙なども含めて軽減税率が適用されるが、別途パッケージ量を請求した場合の包装紙だなどは10%となる。送料についても、「送料込み」で飲食料品を販売し別途送料を請求しない場合は全体で8%、別途請求する場合の送料は10%となる
④食品と食品以外の商品をパッケージングして販売している場合(一体商品) 税抜販売価額が1万円以下かつ食品の占める割合が3分の2以上であれば、全体が軽減税率の対象となる。ただし、個々の価格が表示されている食品と食品以外の商品をセットにして販売する場合は、それぞれの商品の税率が適用される

自社の商品に軽減税率対象のものがある場合

  1. 自分の会社で扱う商品の税率を確認する
    自社の商品に軽減税率の対象となるものがある場合は、請求書や領収書の記入に注意が必要です。軽減税率に対応する新たな経理事務のことを「区分経理」といい、税率の異なる商品に分けて、軽減税率の金額を別々に小計して記入しなければなりません。軽減税率の情報が記入された請求書や領収書のことを「区分記載請求書等」といいます。区分記載請求書等に記入すべき事項は次の7つです。

    1. 請求書等作成者の氏名・名称
    2. 取引の年月日
    3. 取引の内容
    4. 対価の金額(税込金額)
    5. 軽減税率の対象品目であること(令和元年10月1日以降)
    6. 税率ごとに集計した対価の税込金額(令和元年10月1日以降)
    7. 請求書等受領者の氏名・名称

    また、お客様から適用税率についての問い合わせが来た時に回答できるよう、準備しておくことも重要です。売上帳や現金帳などの帳簿に記入する場合も、標準税率10%と軽減税率8%に区分して記帳し、会計ソフトの消費税コードを間違えずに入力します。
    ●ビールとおつまみを販売した時の仕訳例

    借方 貸方
    現金  32,600
    売上(一般税率)  10,000
    仮受消費税(一般税率)  1,000
    売上(軽減税率)  20,000
    仮受消費税(軽減税率)  1,600
  2. 請求書や領収書をもらうときの注意点
    自社の取り扱い商品に軽減税率対象のものが無い場合でも、会社が支給する経費には、標準税率と軽減税率が混在します。したがってすべての会社が、複数税率の管理を行わなければなりません。まず、購入した商品の消費税率が正しいかを「区分記載請求書等」で品目ごとに確認します。区分記載請求書等に記入漏れがある場合は、購入先に確認し、10%か8%のいずれか適用される税率を、自分で「請求書」や「納品書」などに記入しておきます。(ただし令和5年9月30日までの経過措置)
  3. 仕入帳や現金帳などの帳簿を作成する場合
    上記の区分記載請求書等のうち①~⑦までを記入しなければ消費税の申告に際して(消費税法上の)経費として認められないので、これまで以上の丁寧な事務処理が必要です。
  4. 軽減税率の品目には「☆」マークをつけておく
    会計ソフトへの入力時には、消費税コードを間違えないよう注意が必要です。特に消費税の経過措置による8%と、軽減税率制度による8%は、国税と地方税の内訳が異なっているので要注意です。

    名称 消費税率 消費税(国税) 地方消費税
    経過税率 8% 6.3% 1.7%
    軽減税率 8% 6.24% 1.76%

    ●コンビニでお茶とティッシュペーパーを購入した時の仕訳例

    借方 貸方
    福利厚生費(お茶)☆  10,000
    仮受消費税☆  800
    消耗品費(ティッシュペーパー)  5,000
    仮払消費税  500
    現金  16,300
  5. インボイス方式への移行
    複数税率の導入にあたって、「請求書」や領収書」の様式を変更する必要があります。
    商品を購入した会社が仕入税額控除を受けるためには、軽減税率8%の適用対象となる取引なのか、10%の取引かの区分を明確に記載した帳簿及び請求書等の保存が必要となるからです。さらに令和5年10月からは「インボイス制度」が導入される予定です。インボイス制度がスタートすると、仕入れ税額控除の要件として、「適格請求書」の保存が必要となります。
  6. 適格請求書とは
    売手サイドが買い手に対して、「私○○は、何%の税率を適用して、△△円の消費税額を□□から預かりました」という内容を記入して発行する「請求書」などの書類です。売手再度が適格請求書を発行するためには、税務署へ申請し、登録番号を交付してもらいます。インボイス方式がスタートすると、免税事業者や消費者から購入した商品については、仕入れ税額控除が出来なくなるので、計画的な準備が必要になります。

 

消費税額は会計ソフトで計算する
~課税取引と非課税取引~

取引の内容によっては、消費税が課税されない場合があります。

  • 業務の内容
    ・会計ソフトへの入力
  • 確認する書類
    ・請求書または領収書

消費税額を会計ソフトに計算してもらう準備

  • 消費税コードを正しく入力する
    会社は、もらった消費税から支払った消費税を差し引いて納税しますが、1年間の消費税額を手計算で集計するのは、現実的には不可能です。そのため、会計ソフトに仕訳を入力する際、1つずつの取引に消費税コードを紐づけて沖、会計ソフトに計算してもらうのが一般的です。消費税には、課税される取引とされない取引があります。納付すべき消費税を正しく計算するには、仕訳の際、「不課税」「非課税」といった消費税の区分ごとにコードを正確に入力することが大切です。

消費税がかかる取引とかからない取引

  1. 国内取引と国外取引の判定
    消費税は、日本国内において資産の譲渡などが行われた場合に限り課税されます。国内取引かの判定(内外判定)に迷ったら、次の基準で判断します。

    資産の譲渡や貸付の場合 その譲渡または貸付が行われる時点で、その資産が所在していた場所が国内かどうかで判定
    役務提供の場合 その役務の提供が行われた場所が、国内かどうかで判定
    役務の提供が、
    国内と国外の両方で行われた場合
    契約において、国内対応部分と国外対応部分の対価が合理的に区分されていない場合は、役務の提供を行う者の、役務の提供に係る事務所などの所在地で内外判定する
  2. 不課税取引とは
    消費税は「日本国内」において、「事業者」が「事業として」「対価を得て」行う資産の譲渡など及び輸入取引に課税される税金です。したがって、専業主婦が幼稚園のバザーで手作りパンを売ったり、寄付や配当といった対価性のないものには消費税はかかりません。

    不課税取引 理由
    給与・賃金 「事業」として行う資産の譲渡などではないから
    寄付金・祝い金・見舞金・補助金など 対価性がないから
    無償による試供品・見本品の提供 対価の支払がないから
    保険金・共済金 対価性がないから
    試算の廃棄や盗難・滅失 試算の譲渡などに該当しないから
    損害の発生に伴う損害賠償金 対価性がないから
    株式の配当・出資の分配金 対価性がないから
  3. 非課税取引とは
    日本国内において、「事業者が「事業として」「対価を得て」行う資産の譲渡などであっても、消費税の課税になじまないものや社会政策的な配慮から、消費税を課税しない取引非課税取引と言います。

    主な非課税取引

    土地の譲渡・貸付、国債や株券など有価証券の譲渡、預貯金や貸付金の利子、保険料など、郵便切手類、印紙、商品券、プリペイドカードなど、介護保険サービスの提供、身体障碍者用物品の譲渡や貸付・政策の請負など、居住用住宅の貸付け

 

まとめ

 今回はバックオフィスである経理業務の消費税の基本について説明をしましたがいかがでしたか。税込経理については、期中で税込金額を売上や仕入に含めて計算を行い、決算の際には租税公課として処理します。また、税抜経理については、期中において仮受消費税等(売上時)、仮払消費税等(仕入時等)の勘定科目を用いて、売上や仕入と消費税額を区分して計算します。最後に決算の際には、仮払消費税等(中間納付をした場合は中間消費税を含む)と仮受消費税等を相殺して、残額を未払消費税等として仕訳計上します。管理業務の負担を減らすためには、クラウドサービス等の業務効率化ツールを導入してみるのも1つの方法です。そういったお金の管理の仕事を円滑に行うには、簿記の資格取得がおすすめです。働きながら勉強できる資格なので、経理担当としての成長を願うなら資格取得や複業で他社の業務に携わってみてはいかがでしょうか。

-簿記と経理, 経理・会計・財務
-, , , , , ,