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賞与計算の基本~支給の流れと所得税の控除~

 今回はバックオフィス業務である賞与計算の基本の支給の流れと所得税の控除についてご紹介致します。賞与とは、毎月の給与とは別に支払われ、定期または臨時に会社および従業員の勤務成績に応じて支給されるものです。ボーナスとも呼ばれます。賞与の支給額は、あらかじめ確定されているものではなく会社に義務づけられているものでもありません。ただし、支給する時には制度として就業規則などに、支給対象者や支給時期、計算期間、計算方法などを定めておく必要があります。就業規則に定めた時には、その規定内容に従って支給する義務が発生します。業績によって支給の有無がある場合でも、その旨を明示しておく必要があります。今回はこういった賞与計算の基本についてご紹介致します。

 

賞与計算と支給の流れ

賞与とは、3か月を超える期間ごとに、年3回以下で支給される特別な給与です。月々の給料とは区別して考えて、手続きをする必要があります。

  • 作成する書類
    ・賞与明細
    ・支給控除明細書
    ・賞与支払届
  • 準備する書類
    ・賞与に関する就業規則の規定
    ・賞与の査定
  1. 賞与の額を確定する
    年棒制で賞与額が決まっている場合は別だが、業績や個々の貢献度に応じて支給額を会社が決めることが出来ます。
  2. 社会保険料を控除する
    賞与は保険料率をかけて計算する
  3. 雇用保険料を控除する
    賞与の総額に保険料率をかけて計算する
  4. 税金を控除する
    所得税は賞与の税額表をもとに控除する。住民税は月割のため賞与での控除無し
  5. 賞与明細を作成し、賞与を支払う
    冬季賞与など名称は自由
  6. 賞与支払届を届け出る
    5日以内に、「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」を年金事務所へ届け出る
  7. 保険料の納付
    ・社会保険
    「賞与支払届」を提出すると、至急月に支払った給与と合算した納付書が送られてくるので、翌月末日までに納付する

    ・雇用保険
     7月10日の年度更新のときにあわせて支払う

こんな場合はどうする

・賞与支給日前に退職した従業員に賞与を支払わなければならない?
賞与は、6か月程度の賞与査定期間をもとに計算されます。そのため、査定期間に5か月在籍して退職している者に支払う」と明記すること、整理解雇など、本人の意思が及ばない場合は支払うといった対応が必要です。

 

所得税を控除する

賞与から天引きする所得税は、毎月の給料とは違った方法で計算します。

  • 準備する書類
    ・賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表
    ・前月の給与台帳
  • 検索場所
    ・国税庁/賞与に対する源泉徴収税額の算出の表
  1. 前月の給料支給額がわかるものを用意する
    賞与の税金は、前月の給料の金額によって決まる
  2. 社会保険料の金額を確認する
    前月の給料から社会保険料を引いた金額で、税金の率が決まる
  3. 源泉徴収税額表を用意する
    「賞与に対する源泉徴収税額の算出表」を使って所得税を計算する
  4. 扶養控除申告書の提出の有無を確認する
    月給と同じように、扶養控除申告書の提出の有無によって、税額が変わる

源泉所得税の基本を確認する

  1. 賞与から天引きする源泉所得税率
    前月に支払った給料から社会保険料を控除した金額をもとに決まります。
  2. 源泉所得税の計算方法
    原則として次の計算式で計算します。
    (賞与の額面金額-社会保険料の額)×前月の給料支給額から算出率の表に基づく所得税率=源泉所得税
  3. 賞与から天引きする税金
    源泉所得税だけです。住民税は控除しません。

こんな場合はどうする

・決算賞与を支払う場合
従業員への賞与は無条件に損金計上できますが、決算日までに支給しなかった未払い賞与は、実際に支払った期の損金にするのが原則です。ただし次の3つの条件を満たした場合は、未払いでも投機の損金として計上できます。

  1. 賞与の支給額を、すべての受給者に各人別に通知している
  2. 決算日後1か月以内に、通知をした全員に支払っていること
  3. 決算時に未払い計上していること

賞与の源泉所得税の計算をマスターする①~通常のケース~

賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表

前月の給料の金額から天引きされた社会保険料の金額をマイナスします。次に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」のページを開き、甲欄の「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」欄と、「扶養親族などの数」の交差する欄を確認します。支給する賞与の額から社会保険料の額をマイナスした金額に、その行の左端に記載されている「賞与の金額に乗ずべき率」を掛けて、源泉所得税を計算します。

賞与支給額:543,200円
・扶養家族:2人
・賞与から控除される社会保険料の合計:82,454円
・前月の給料支給額:245,000円
(543,200円-82,454円)×2.042%=9,408円

こんな場合はどうする

・役員賞与を支払う場合
役員賞与は、原則として法人税の計算上、損金に計上することが出来ません。ただし事前に支給額を確定し、支払う時期と金額を税務署に届、その届出書通りに支払えば認められます。これを「事前確定届出給与」といいます。税務署に届ける日は、次のうちいずれか早い方の日にちです。

  1. 株主総会の決議の日から1か月以内
  2. 決算から4カ月以内

賞与の源泉所得税の計算をマスターする②~イレギュラーのケース~

  1. 乙欄を使う人
    「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない人などは乙欄で計算します。前月の給料から社会保険料を引いた金額を探し、該当する行の左端の欄に記載されている税率を賞与の額から社会保険料をマイナスした金額にかけて計算します。
  2. 前月中に給与の支払いがない場合
    通常月と同じように「月が表の甲欄または乙欄を使って計算します。

    (賞与の額-社会保険料)×1/6(12※)=A
    Aにかかる通常の源泉所得税を月額表で決める=B
    B×6(12※)=賞与にかかる源泉所得税
    ※算定期間が6か月を超えるときは12
  3. 賞与の額が前月給料の10倍を超える場合
    通常と同じように「月額表」の甲欄または乙欄を使って計算します。

    (賞与の額-社会保険料)×1/6(12※)=A
    A+(前月給料-前月の社会保険料)=B

    Bにかかる通常の源泉所得税を月額表で決める=C
    C-前月の給料で控除した所得税=D

    D×6(12※)=賞与にかかる源泉所得税
    ※算定期間が6か月を超えるときは12

賞与の源泉所得税まとめ

賞与の区分 使用する税額
扶養控除等申告書の

提出有

前月中に給与の支払有 賞与の額が給与の10倍以内 算出率表の甲欄
10倍を超えるとき 月額表の甲欄
前月中に給与の支払無し 月額表の甲欄
扶養控除等申告書

の提出なし

前月中に給与の支払有 賞与の額が給与の10倍以内 算出率表の乙欄
10倍を超えるとき 月額表の乙欄
前月中に給与の支払無し 月額表の乙欄

 

まとめ

 今回は賞与計算の中でも支給の流れと所得税の控除ついての基本的なを説明をしましたがいかがでしたか。今回解説したように、ボーナスの支給は法律で決まっているわけではなく、支給の有無は各企業が自由に決めることができます。ただし、支給される場合は、就業規則に支給時期、算定期間、算定基準などを記載する必要があります。まずは、会社の就業規則を確認して規定を理解しておきましょう。そういった給与計算の仕事を円滑に行うには、社会保険労務士の資格取得がおすすめです。働きながら勉強できる資格なので、給与計算の担当としての成長を願うなら資格取得や複業で他社の業務に携わってみてはいかがでしょうか。

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