経理や財務の部署に所属すると、様々な業務が出てきます。決算を取りまとめ、財務諸表を作り、分析することで次の会社のアクションに繋げるということは、まさに経営スタッフそのものの仕事です。上場会社は四半期(3カ月)ごとに決算を行い、その結果を発表します。開示業務とは、上場企業などが投資家へ向けて提出する開示書類を作成することです。開示書類にはいくつかの種類があり、営業および経理の状況、その他事業に関する重要事項を報告することが目的です。会社についての全般的な内容が網羅されますので、開示書類を作成するためには、経理と他の部署との連携が欠かせません。そこで今回は外部開示業務のマニュアルレポートについてご紹介を致します。
財務諸表の作成
多国籍企業をはじめ、現在は国際的な経営活動をする会社も増えています。このような会社は、その事業年度末にマニュアルレポート(Annual Report : 年次報告書)という冊子を作成し、投資家等へ向けて配布しています。
マニュアルレポートの記載の仕方については、法律などの要請によって制限されるもんのではありません。投資家に分かりやすいように、表やグラフを使い、っかう社が分かりやすい報告書を作成しています。
外国人投資家が多い場合には、和文のマニュアルレポートのほかに英文のマニュアルレポートを作成します。また、米国基準で財務諸表を作成する必要がある会社は、財務報告部分は下記①「20-F」に記載するものをそのまま使用しています。
マニュアルレポート(AR)の記載項目<例>
- 財務ハイライト
- 経営者メッセージ
- 事業概況
- 事業等のリスク
- コーポレートリスク
- コーポレートガバナンス
- 企業理念
- 主要財務データ
- その他主力商品の宣伝、開発状況 等
用語の意義
①20-F
米国で公募証券を発行する会社は、米国証券取引委員会(SEC)に登録します。このSECに登録します。このSECへの提出を求められる報告書のうち、外国企業の年次報告について使用される株式をいいます。
②米国基準
米国において採用される会計基準で、財務会計報告書、会計原則審議会意見書、発生問題専門委員会合意書等から構成されます。前述のSECへ提出する書類は、米国基準により作成されます。
米国基準の財務諸表は、日本の会計基準との相違点を調整(GAAP調整=ギャップ調整)して作成されます。
日本基準から米国基準への組替え
マニュアルレポート作成フロー
IFRS
IFRS(International Financial Reporting Standards)とは、国際財務報告基準のこと江、国際会計基準審議会(IASB)により設定される会計基準の総称であり、世界的に承認され遵守されることを目的としたものです。
IFRSは、国際会計基準・解釈指針書等、国際財務報告基準書、国際財務報告基準解釈指針から構成されます。現在、100か国以上で採用されており、日本でも導入への検討が進んでいます。IFRS導入にあたって障壁を減らそうと、コンバージェンス作業(自国の会計基準をIFRSに近づけるように変更すること)が進み、アドオプション(IFRSを全面的に適用すること)のための環境整備が行われています。
IFRSを日本の会計基準と比較した場合、収益の計上基準や減価償却についての考え方、のれんについての扱いとは異なる財務諸表が作成されることになります。主なものとして、以下のものがあります。
- 財政状態計算書
現在の貸借対照表が名称変更したもので、記載内容に大きな変更はありませんが、より時価評価が重視されている点が特徴として挙げられます。 - 包括利益計算書
現在の損益計算書のようなものです。当期利益の計算過程で「継続事業からの当期利益」と「廃止事業からの当期損失」とに分かれて記載される点や未実現利益が加味される点、包括利益自体の概念等で相違があります。
まとめ
投資家などへ向けた開示書類を作成する開示業務は、年間を通して複数の書類を継続的に作成していかなくてはなりません。特に、決算短信は決算後45日以内に開示しなくてはなりませんので、作成スケジュールはタイトになります。しかし、開示業務の経験を積むことは、上場企業が増加傾向にあり、開示業務の経験を持つ人材のニーズは、転職に非常に有利に働くといえるでしょう。