経理や財務の部署に所属すると、様々な業務が出てきます。財務管理の目的は、「会社に必要な資金をどのように調達して」「その資金をどのように運用していくか」の施策を考えて、企業価値を上げるために実行していくことにあります。経理は会社内で発生した取引に関して、仕訳を通して、記録計算することが業務になるため、財務計画の立案から資金の調達と運用がメインである財務管理とは異なる業務になります。企業が発行する債権だということは分かっていても、具体的にどのような債権で、企業の資金調達手段としてどのようなメリットがあるのか知らない人もいるかと思います。曖昧な認識で社債を扱わないように、しっかりと基礎知識を把握しておく必要があります。今回は、社債管理の社債発行についてご紹介を致します。
社債とは
社債とは、事業会社が広く一般から長期資金を調達するために発行する債券のことをいいます。事業会社の発行する債券であることから、事業債ともいいます。社債の主な特徴として、期日償還を約束している点と確定的な利払いを行うという点があります。
社債の種類
社債は構成する要素によって、以下のように分けることが出来ます。
①新株予約権の有無
- 新株予約権付社債
株式を一定の条件で取得するための権利である新株予約権を付与された社債 - 普通社債
上記以外の社債
②発行対象
- 公募債
市場を通して広く一般投資家を対象とする社債 - 私募債
特定の少数の投資家を対象とする社債 - 銀行引受私募債
銀行等の金融機関(適格機関投資家)のみを対象とした社債 - 少人数私募債
縁故者や会社に関連する者で、50名未満を対象とした社債
③担保の有無
- 担保付社債
発行する際、担保が設定される社債 - 一般担保付社債
特別法に基づいて発行され、社債の発行会社の全財産によって優先的に弁済される権利が付かされている社債 - 物上担保付社債
担保付社債信託法に基づき、債券発行会社が保有する土地、工場、機械設備などの物的財産に担保がつけられている社債 - 無担保社債
発行する際、担保が設定されない社債なお、現在では、発行される大部分の社債は無担保社債となっています。
社債発行の流れ
社債発行の流れの一例として、以下の手順があります。
①発行要件等の定義
発行にあたり、債権総額、債券の種類、利率、利息の支払方法、償還期限、担保設定の有無などの発行要件を検討します。
②取締役会の承認
社債の発行に関しては、取締役の決議事項になります。
③管理会社との契約
選定した社債管理会社と、契約を締結します。管理会社の主な業務は、債券の発行事務の代行と社債券の管理になります(ただし、少人数私募債の場合は、管理会社がなくてもよいです。)。
④社債の発行
社債の発行に伴って、口座に入金となります。
社債発行費
社債を発行する際に発生する費用を社債発行費といいます。
①主な費用
社債券の印刷費用や募集のための広告費用です。また、社債管理会社が入る場合には、財務代理手数料という発行事務や期中事務の代行に関する費用もかかります。
②会計処理
原則として、支出時に費用処理(営業外費用)します。但し、社債の期間や金額費用を勘案して、繰延処理(繰延資産計上)することも可能です。
まとめ
今回は、社債は投資家から直接借りている借金です。銀行の融資のように月々の返済がないからといって、返済のことを考えずに使っても問題ないという訳ではありません。確実に返済できるような事業計画や返済計画を立てた上で、償還日に向けて集めた資金を運用していく必要があります。また、社債は投資家との間に信頼関係がなければ成り立たない資金調達方法です。大企業ほど信用リスクが低くない中小企業にとっては、特に信頼関係が重要視されます。社債の募集総額や支払い方法はもちろんのこと、事業計画書などの情報も積極的に開示して、投資家との信頼関係を築くことが大切です。。