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外部開示業務についてご紹介~有価証券報告書の作成~

経理や財務の部署に所属すると、様々な業務が出てきます。決算を取りまとめ、財務諸表を作り、分析することで次の会社のアクションに繋げるということは、まさに経営スタッフそのものの仕事です。上場会社は四半期(3カ月)ごとに決算を行い、その結果を発表します。開示業務とは、上場企業などが投資家へ向けて提出する開示書類を作成することです。開示書類にはいくつかの種類があり、営業および経理の状況、その他事業に関する重要事項を報告することが目的です。会社についての全般的な内容が網羅されますので、開示書類を作成するためには、経理と他の部署との連携が欠かせません。そこで今回は外部開示業務の有価証券報告書の作成についてご紹介を致します。

有価証券報告書とは

 株券や債券などの有価証券を使って1億円以上の資金調達をする会社や、株式を証券取引所に上場、公開している会社が、金融庁に提出を義務付けられている書類のことをいいます。

有価証券報告書には、第一部と第二部がありますが、第一部の企業情報がメインで構成されています。この第一部は、大きく分けて以下のように区分されています。

  1. 企業の概況
  2. 事業の状況
  3. 設備の状況
  4. 提出会社の状況
  5. 経理の状況
  6. 提出会社の株式事務の概要
  7. 提出会社の参考情報

 上記のうち、会計監査人の監査証明を受けるのは、第5の「経理の状況」の部分となります。
 
 企業の経理担当者は、この経理の状況の部分を作成するとともに、その他の部分の作成を関係部署に依頼します。

 

有報用連結財務諸表と注記事項等の作成

①有報用連結財務諸表の作成

 経理の状況は、連結財務諸表に関する部分と(個別)財務諸表に関する部分に分かれています。

 連結財務諸表については、連結決算の手続きにより作成した連結財務諸表をもとに、開示用の組替作業をして作成します。科目組替えは基本的に毎期継続的に同じ基準で作成する必要がありますので、前年の組替表を参考に作成します。

②注記事項等の作成

 財務諸表の補足事項となる注記事項を作成します。各種のひな型などを参考にちゅきに漏れがないように注意する必要があります。

③作成上の留意点

 作成にあたり、外部からの情報収集や有報作業の手引きなどを用いて毎年のように改正される(連結)財務諸表規則や会計基準の変更等について確認し、場合によっては、社内の会計処理やデータ収集方法を見直すことも必要となります。また、根拠となる作成資料を整備し、連結財務諸表や注記事項と整合性をとることも必要となります。

 

定性資料の作成

 各種財務数値など、定性資料の作成を行います。前期提出資料を確認し、内容の分析を行います。

 

後発事象の検証

 後発事象とは決算日後に発生した事象で、翌事業年度以降の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすような事象を言います。

 上記のような事象が発生した場合には、その内容を有価証券報告書に記載する必要がありますので、決算日後に生じた後発事象についての検証を行います。

 

資料の最終化

 有価証券報告書は、経理部門以外にもかいしゃの 概況や設備の概況など関係部門で作成するものもあるため、表記方法のバラつきや記載内容の整合性が取れていない可能性があります。従って、経理部門やIR部門などで全体的なチェックを行う必要があります。

 

電子開示手続き

 金融商品取引法に基づく有価証券報告書などの開示書類に関する電子開示システムのことを通称EDINET(エディネット)といいます。

 現在、有価証券報告書はオンラインによって提出し、このEDINET上で、各社の有価証券報告書を閲覧できる仕組みになっています。提出漏れを防ぐためには、送信後にEDINETに掲示されているかを確認することが大切になります。

 

四半期報告書の作成

 従前、有価証券報告書は半期に一度の作成が必要でしたが、現在は四半期ごとに第1四半期から第3四半期までは四半期報告書を、大4四半期(期末)に有価証券報告書を作成する必要があります。四半期決算短信同様、四半期報告書も連結財務諸表作成会社は連結ベースのもののみを、連結財務諸表非作成会社は個別ベースのものを作成します。

 

ワンポイント

金融商品取引法

 金融商品取引法とは、投資性のある金融商品を取引する際の利用者保護と透明で公正な市場づくりを目的としたものであり、従前の証券取引法が抜本的に改正され制定された法律です。上場会社等、株券を発行する会社は、この法律の適用を受けることになっています。

 

まとめ

投資家などへ向けた開示書類を作成する開示業務は、年間を通して複数の書類を継続的に作成していかなくてはなりません。特に、決算短信は決算後45日以内に開示しなくてはなりませんので、作成スケジュールはタイトになります。しかし、開示業務の経験を積むことは、上場企業が増加傾向にあり、開示業務の経験を持つ人材のニーズは、転職に非常に有利に働くといえるでしょう。

 

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