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人事評価の基本~人事評価はマネジメントの基本③~

人事評価の実務全般にわたって解説を行ってまいります。今回は、ノウハウものではなく、出来るだけ、ノウハウの背景にある人事評価の概念や考え方にさかのぼって理解してもらうことを試みていきたいと考えております。ノウハウは、当座の問題解決には便利ですが、状況が目まぐるしく変わる現在にあって、様々に発生する人事評価の諸問題を自律的に解決していくための知恵を与えてくれません。私は、人事評価にかかわる人が、自分の頭で人事評価の諸問題を考えて結論を出してほしいと思っています。また、そういう思考力をこそ鍛えるべきであると考えています。今回はそのための教科書となるような内容をご紹介できればと考えております。

 

人事評価はマネジメントの基本

企業文化の違いで人事評価のあり方は違う

①極めて日本的な日本の人事評価

 人事評価は「人が人をマネジメントするための手段の一つ」ですが、そうであれば、それは国の文化によっても違ったものになります。日本の人事評価の基本スタイルがどのように形作られてきたのかの歴史は、それほど共通認識になっているわけではありませんが、アメリカ企業から多くを学んだことに間違いはないようです。しかし、日本企業の多くは、日本の人事評価というものが、極めて日本的であると考えています。

 

また、近年、中国にも人事評価の考え方が急速に入っていますが、どちらかというと日本的なものよりも、欧米的なものの考え方の方が中国企業にはなじみやすいと考えている人が多いのではないかという話を聞いたことがあります。これは、その国の文化が、人事評価に大きな影響を与えていることを示唆しています。同じ国の中でも企業が作り上げてきた企業文化の違いが人事評価に大きな影響を与えます。

 

下記の表では、企業文化の違いを念頭に検討観点を提供しているものですが、日本企業の中でも、社員間信頼度の高い関係を作り上げている企業と、どうもギスギスした関係になってしまっている企業があります。

 

一方、人事評価制度を見た際に、非常に緻密に出来上がっているものと、非常に抽象的な感じを受けるものとがあります。
緻密というのは、評価表にたくさんの評価項目があり、しかもその企業ならではの考え方が見て取れるもので、自己評価から、一次評価、二次評価、コメント欄に車で完璧にそろっているものです。
抽象的というのは、比較的大雑把な評価表しかなく、評価項目もどこの企業でも適用するような一般的なもので、自己評価やコメント欄なども特にないようなタイプです。

 ◎企業文化の違いと人事評価のあり方
評価の緻密さ
高い 低い
社員間の
信頼度
高い 公明正大型 阿吽の呼吸型
低い 説得型 カリスマ型

②「社員間の信頼度」と「評価の緻密さ」で人事評価のタイプを見る

上記表では、「社員間の信頼度」と「評価の緻密さ」に概念を分けて説明しています。
「社員間の信頼度」が高く、「評価の緻密さ」が低いという欄に、「阿吽の呼吸型」というキーワードを入れました。これは、前述した抽象的な評価表を基に人事評価をしている企業の場合、「阿吽の呼吸型」のコミュニケーションを求められるほどに「社員間の信頼度」が「高い」必要があることを示しています。この表はそのような見方をしてください。

 

 同じく、「社員間の信頼度」が低く、「評価の緻密さ」が低い場合は、「カリスマ型」としまsた。社内的な相互の信頼性が乏しいギスギスした雰囲気の企業では、中小殿高い、一般的な評価表を使うことはできれば避けた方が良いと思います。それではもこのやり方を取ろうとすると、それは一種の「カリスマ型」のリーダーシップが経営者には必要になることを言います。

 

 さらに、「社員間の信頼度」が低く、「評価の緻密さ」が高い場合は、「説得型」というキーワードを入れました。「社員間の信頼度」が低いという現状認識だと、どういう行動をとって、どういう成果をあげてくれたら、どういう処遇にするかということを一つひとつ社員に明示していく必要があることは、比較的理解しやすいと思います。このやり方をきちんと進めていくと、そのうちに「社員間の信頼度」も高くなっていくはずです。

 

 最後に、「社員間の信頼度」が高く、「評価の緻密さ」が高い場合は、ここは「公明正大型」としました。「社員間の信頼度」が高いわけですから、人事評価についてそれほど丁寧にやらなくても、社員も理解してもらえるという面があります。私は常々思うのですが、「社員間の信頼度の高さ」というのは大きな経営資源です。それだけで、コミュニケーション効率が良く、スピーディーな仕事が出来るでしょう。
しかし、人事評価を緻密に丁寧にやろうとするのは、「社員間の信頼度」の高さがいつ離れるかもしれない微妙なものだということを認識しているからで、それゆえ、常に「公明正大型」を目指すとしているのです。

 

そうであるならば「社員の信頼度」がどうであれ、いつも「公明正大型」がよいのではないかとも言えますが、「公明正大型」も負荷がかかりますので、「社員の信頼度」が高ければ、ある程度手をゆるめても良いかと思います。企業経営を行うに当たっても重点主義の考え方が、大切で、社員の努力をどこに集中させるかは重要な経営判断事項です。人事評価に掛ける努力を当面別の課題解決に振り替えることは、「社員間の信頼度」が高ければ十分可能となります。

 

まとめ

人は正当な評価がされないとモチベーションが下がり、やる気を失います。人事評価は査定の場ではなく、社員の成長を促し、先々の高いパフォーマンスにつなげていく仕組みです。仕組みをよく理解したうえで人事評価を行えるようにしていきましょう。人事評価はマネジメントの基本であることを頭に置き、時代に合った人事評価の習慣をしっかりと理解し、実践していくことが、管理者には必要です。

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